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松野一夫と「大下君の武勇伝」

松野一夫は、大正時代に博文館発行の『新青年』以外の雑誌にも挿絵を描いていました。とくに『旬刊写真報知』に掲載された探偵小説に描いていることが多かったです。

 

今回紹介するのは、甲賀三郎の短篇「大下君の武勇伝」の挿絵になります。この作品は、『旬刊写真報知』大正14年5月5日号(3巻13号)に掲載されたものです。現在、図書館などに収められている甲賀三郎『恐ろしき凝視』春陽堂、1999(復刻版)で読めます。

 

 

「大下君」といっても、探偵小説作家の大下宇陀児のことではなく、作中の人物「大下辰馬(たつま)君」のことになります。その大下君の武勇伝の話です。友人宅を訪れた大下君は、夜の10時すぎに暇を告げ、東京の祐天寺から目黒駅へと急いでいました。目黒川を渡って、白金の高台を通るところに、陸軍の火薬製造所の一部が建っています。あたりは暗いし、寂しいので大声で謡曲をうたっていましたが、そこに印半纏を着た男が現れ、いきなり怒鳴り始めました。文句をつけられた大下君は紳士なので、黙って行きすぎようとしましたが、男は大下君に襲いかかりました。そのとき大下君は詫びて逃げようとしましたが、追いつかれ、絶体絶命のピンチになりました。仕方なく、大下君は反撃に出て、角力の「素首落とし」で、相手を組み伏せます。その場面の挿絵になります。それにしても、大下君は、甲賀三郎にしか見えませんね(苦笑)。松野一夫は意図したのでしょうか?

 

 

この挿絵は、警察で警部にそのときの事情を説明している場面になります。雰囲気が良く出ています。

 

雑誌に掲載された作品に、挿絵がついていると、物語にぐっと臨場感がでてきます。読者も引き込まれやすい。松野一夫の挿絵は、雑誌の読者に命を与えていると思います。

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