『旬刊写真報知』大正14(1925)年5月25日号(3巻15号)には、牧逸馬の「七二八号囚の告白」が掲載されています。挿絵は松野一夫。そのタッチは、大正5(1916)年に松野一夫が師の安田稔とともに樺太を取材したときに残したスケッチの感じとよく似ています。
以下に掲げてみましょう。
これは、七二八号囚と呼ばれるイエーツが収監された部屋の中で悩んでいるシーンだと思われます。他人をかばって刑務所に入っているイエーツでしたが、今にも妻が亡くなりそうになっています。それを知った刑務所の所長がイエーツを妻のところを連れて行きます。ようやく間に合ったイエーツは、妻に「釈放された」と嘘をつき、最後のキッスをします。別れを告げたイエーツが、また刑務所へ戻ろうとします。それが次のシーンになっています。
松野一夫の描くイエーツは、どうにもならない寂しさを抱えているように見えます。物語は、そのすぐあと、イエーツの開き直ったセリフで終わるのですが、牧逸馬の描くイエーツの姿はあまりにも哀しいものとして浮かび上がってきます。短篇ながら佳作です。
たった二枚の挿絵ですが、イエーツの揺れ動く感情を見事に現しているのではないでしょうか。なお、「七二八号囚の告白」は、『牧逸馬傑作選6』(山手書房新社、1993)に収められています。
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