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二月二十五日はコミケットに初参加してきましたが、爆死でした。
いやはや、去年のコミケ(夏)よりもダメでした。
あれはお隣に盛林堂さんがいらっしゃったおかげかな。
まったくミステリ関係のブースがない中で、無謀と言えば無謀でした。
もっとも悪いことばかりではなく、申し込み方法はコミケよりもわかりやすく、解説パンフレットも読みやすかったです。コミケは複雑怪奇です。まあ、それだけです。
で、新刊の「一攫千金のウォリングフォード」ですが、売るほどあります(笑)。
おかげさまで通販をお願いしている各書店さんも好調なようで、追加注文をいただいたところもありました。
以下、通販で販売しているのは
盛林堂
ジグソーハウス
CAVA BOOKS
タカラ〜ムの本棚
です。店頭販売をしてくださっているのは
古書荒蝦夷(仙台)
古書いろどり(神田神保町)
henn books (名古屋)
うみねこ堂書林 (神戸)
です。
どうぞよろしくお願いします。PR -
『旬刊写真報知』に掲載された田中早苗の作品には、松野一夫の挿絵が多かったです。「入江の一夜」という作品は、『旬刊写真報知』大正14(1925)年10月5日号(3巻28号)に掲載され、松野一夫の挿絵が2枚ついていました。
実にこれは不思議な物語です。――9月のよく晴れた夕方、二人の男(若い青年のエルヴァンと中年紳士ルグラン)がブルターニュのタルベール岬とグルナーブルの間の街道を歩いていました。エルヴァン青年は、今から20年前にこのあたりで行方不明になった兄を捜しに来ていました。エルヴァンは、ルグランと別れ、海へ続く急な下り坂を下りていき、美しい森で縁取られたブル―リエの入江に出ました。人家らしいものは二件しか見えなくて、寂しい場所でした。エルヴァンは、休もうと思って浜辺にあった大きな石に腰を下ろしました。彼は、もしかしたら、このような場所で兄は殺されたかもしれないという不気味な想像をしてしまいました。すぐそばにおそろしく大きな巨大な鉄製のブイがおいてありました。すると、ブイの中から突然、コトコトと物をたたく音が聞こえるのです。まさか、中に人がいるわけがないと思いながら、確かめるために彼はそのブイに登り始めました。が、しかし、足を踏み外して石の上に転げ落ち、額を打ってしまい、昏倒していました。やがて気が付きましたが、夜のとばりも下りてしまい、痛む頭を気にしながら街道に戻りました。そのときです! 一軒の家から、人の凄まじく大きな悲鳴が聞こえました。エルヴァンは驚いて、その家に向かい、ドアの前に立ちました。そのときの場面が以下のものです。
家の中からは、美しい女性が出てきました。彼は、家に中に導かれましたが、二階の部屋に突然押し込まれます。中は暗かったのですが、炉の燃えさしのまきが勢いよく燃えだし、室内が明るくなりました。見ると、炉の前には、一人の男がうずくまっていました。でも、よく確かめると死んでいます。驚きました。呆然としていると、外で二階に上がってくるたくさんの人々の声がします。もしかしたら、あの女は私を犯人にでっち上げようとして、この部屋に閉じ込めたのかと思いました。それをいろいろと考えている場面が次の挿絵です。
エルヴァンのせっぱ詰まった想像が挿絵でうまく描かれていますね。コラージュっぽい雰囲気もたまらないです。ここからエルヴァンの脱出劇がはじまるのですが、短篇なので、あっけなく片付いてしまいます。そして前述した兄の行方不明とブイの話とがつながって、見事なオチをつくっています。
これもまた、原作があると思います。しかし掲載誌には原作者名がありません。時間があったら、調べてみたいと思います。
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ヒラヤマ探偵文庫は、きたる2月25日(日曜日)に東京ビックサイトで開催されるコミティア147に参加します。
場所は「す42a」です。
昨年はコミケにも参加してみましたが、今度はコミティアに参加してみようと思います。
春(5月)と秋(11月)の文学フリマ東京の間に、何か参加できるものはないかと思っていたのですが、まずは夏コミケを試してみました。しかしコミケは申し込み方法が複雑で大変だし、いろいろと独特のきまりも多く、その割にはあまり売れなかったので、うちとは合わないようでした。
9月には文学フリマ大阪があり、大阪独特の明るい雰囲気もあり楽しいのですが、やはり旅費がかかります。でもまた行ってみたい気もあります。
1月には文学フリマ京都がありますが、11月の東京からたった二ヶ月しか経っていませんし、大阪と比べると今ひとつおとなしい感じがしました。それに最近京都は宿泊費が高騰していますしww
だから2月か3月の即売会があるとちょうどいいので、今回コミティアを試してみようと思ったわけです。
新刊として、「一攫千金のウォリングフォード」(チェスター)を出します。
また、大正時代の不思議小説パンフレットシリーズ1、2を販売します。
これらは通販以外では、即売会の直販、あとは高知県立文学館のみでしか販売しませんので、どうぞよろしくお願いします。
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田中早苗の短篇に「黒鼠」というものがあります。『旬刊写真報知』大正14(1925)年8月5日号(3巻22号)に掲載されました。これもまた、挿絵が松野一夫だったのです。
ドックの職工であったジョー・ピンチベックは、不景気のため会社を突然首になりました。飲み食い代と室代だけはどうしても稼がなければならないので、どんな仕事でもやって、しのいでいました。ジョーの部屋は、テムズ川の傍にあって、部屋の窓からその暗く濁った満々たる川面が見えています。ある日、窓から食べ物のかすを投げ捨てていたら、大きな黒鼠がそれをあさりにやってきて、はいあがり、部屋の中に入ってきました。ジョーは、思いました。その黒鼠を捕まえて、売ろうと。
ジョーはまんまと黒鼠を捕獲して、早速教育に取りかかりました。根気よくやっているうちに、鼠は次第に馴れて、おとなしくなりました。そして不思議なことにジョーのことを大好きになりました。その場面に描かれているのが、次の挿絵です。
なんだか二人で話し合っているように見えますね。窓の外にはテムズ川が描かれています。やがて、ジョーは黒鼠を使って、あることを思いつきます。宝石店に行き、黒鼠を使って、宝石を盗ませようとしたのです。宝石店の扉を鼠にかじり破らせて、中に入れ、ショーウィンドーの宝石を取らせるのです。もちろん、黒鼠にはそういう訓練を施していました。それが以下の場面になります。
挿絵左下に黒鼠が見えますが、その左上に丸い黒い穴が壁にあいているのが見えるでしょうか? それが鼠のあけた穴だったんですね。松野一夫の挿絵では、ちゃんと再現されています。物語は、それからどんどん進んでいき、最後にはドラマが待っています。哀愁ある話に仕上がっています。うまいです。
たぶん原作があると思いますが、調べがつきません。『旬刊写真報知』には、ほかにも田中早苗の作品や松本泰の作品が載っているので、機会があったら紹介してみたいと思います。ヒラヤマ探偵文庫でまとめて出そうかしら。
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ヒラヤマ探偵文庫をご愛顧いただきありがとうございます。
2月25日のコミティア147(東京ビッグサイト)にヒラヤマ探偵文庫は出店し、その際に新刊
「一攫千金のウォリングフォード」ジョージ・ランドルフ・チェスター、平山雄一訳
を、新発売いたします。
この本は「クイーンの定員」39番である、痛快な詐欺師小説です。
もちろんいつもお取り扱いいただいている書店さんでも通販、店頭販売をいたしますので、おたのしみにしてください。これから順次各書店さんで詳しい情報が公開されると思いますので、ご注目のほどよろしくお願いします。