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  • ヒラヤマ探偵文庫のBASE通販店をつくってみました
    今までは、各書店さんにお願いする以外に、BOOTHで通販をしてきました。
    ただBOOTHはあまり一般的でないというのと、会員登録が必要なのですね。
    そこでためしに、なんでも通販をしているBASEに同じような店を作ってみました。
    中身は一緒なのですが決済方法がいろいろあるのがいいようです。
    いかがでしょうか。
    使いやすいほうでお使いいただければと思います。

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  • 文学フリマ大阪11に参加してきました


    大阪の皆さま、お世話になりました。無事文学フリマ大阪から帰ってきました。
    今回の新刊は



    の二冊、「ある刑事の冒険談」ウォーターズ
    「二重の影」森下雨村
    でした。
    今年は前回の1・5倍の広さになり、およそ700ブース。
    来場者も倍くらいの数になったらしいです。
    昨年も感じたのですが、大阪は元気ですね。
    これからどんどん発展していく気配がしました。
    ただ、「ある刑事の冒険談」はあまりにもマニアックすぎたかな。「二重の影」のほうが売れ行きはよかったです。一応日本でも名前が知られている作家ですしね。(いや、最近の若い方はどうか知りませんが)
    お隣になった方々、ありがとうございました。

    「新青年」研究会が最近はバーチャルでしかひらかれないので、国内小説担当の湯浅さんと会って食事をしながら、これから出す本についていろいろ相談をしました。やはり実際に会うのは大切ですね。しかもズーム会議では、他の人もいるので余計な雑談もできませんし。
    さまざまなアイデアが出てきて、おもしろい企画会議でした。
    もっともあとは、それを形にする努力と時間がどれだけあるかということなんですがww
    しかしそれを他人に任せると、またそれで面倒なことも起きてしまいますし、妥協もしなければいけません。一人親方でやっているからこそ、できることもあります。湯浅さんは国内、私は海外ということですみわけをして、まったく別々の活動をしているからこそ、忌憚のない意見も出せるということもあります。(「囁く電話」は例外です)
    なにもかも一人でやるということの利点もあり、欠点もあるのですが、商業出版でたくさんの人が関わることも経験した上で、私が出したい本はそんなにたくさんの人の手をわずらわせては申し訳ないという思いも強くなりました。そういうわけで始めたのが、ヒラヤマ探偵文庫なのです。

    他にもたくさん面白い本が手に入りました。特に横溝正史関係は、すごいですね。今一番のっています。
    さらに翻訳も頑張っているみなさんがたくさんおられます。
    どうぞみなさん、来たる11月の文学フリマ東京においでください。
  • 文学フリマ大阪11の新刊 森下雨村「二重の影」と「幻の男」

    ヒラヤマ探偵文庫JAPANでは、910日に開催される文学フリマ大阪11で最新刊、森下雨村『二重の影』を発行します。この巻には、雨村の作品を二編収録してあります。一つは「幻の男」で、『日本少年』大正131月号に掲載された作品です。雨村の違うペンネーム「佐川春風」名義で掲載されました。

    この画像は、初出「幻の男」の扉絵です。絵の右上には、幻の男を現した光る眼がありますね。見えますか?

    作品に扉絵をつけているので、掲載には力が入っています。本文中には、その画家のクレジットはないのですが、挿絵中のサインから「中野修二」と推測されます。この頃、中野は『日本少年』に漫画や挿絵をたくさん描いていました。

    「幻の男」に見られるトリックは、二上洋一『少年小説の系譜』によれば、「怪人二十面相」における博物館の館長に化ける二十面相のトリックと同じであるということです。「幻の男」のほうが先に発表されていますから、「怪人二十面相」に何らかの影響を与えたといえそうですね。

    また、この号は、大正131月号ですから、まだ関東大震災の影響が随所に残っていた頃に発行された雑誌です。「幻の男」の中でも、「立花記者が本郷の博士邸に着いたのは九時二十分であった。閑静な本郷台町の高台はひっそりとして、あの地震以来、東京の街々にできた夜警団の拍子木が、カチカチと夜の静寂を破っている」とありました。これは、物語上では大正12129日の夜の場面でした(「三 博士と義賊の試合」・『二重の影』ヒラヤマ探偵文庫30P11より)。

    うむ。――ここで、あまりしゃべっても何ですから、あとは読んでからのお楽しみということで、、、。

    さて、もう一つの収録作品は「二重の影」です。『少女倶楽部』大正121月号から4月号まで掲載されたものになります。こちらの方は、「森下雨村」名義でした。表題の「二重の影」は「にじゅうのかげ」と読みます。「ふたえのかげ」と読みそうですが、そうではなくて、連載開始の表題を見てもらうと「重」に「ぢゆう」とルビが振ってありました。以下の画像をご覧下さい。

    実は「幻の男」とは、作品の方向性に違いがありました。

    トリックを強調するというよりも、主人公の澤本美智子にそった目線で描かれた事件は、『少女倶楽部』の読者達に寄り添い、共感しやすいものなっていました。「幻の男」とは、読者と向き合う方向性に違いがあるのです。そこには少女の生活に密着しつつ、少しでも冒険を夢見る〈少女〉という存在が描かれていました。

     

    挿絵は、一木弴。一木はこの時期、江戸川乱歩のデビュー作「二銭銅貨」(『新青年』大正一二年四月春季増大号)でも挿絵を描いています。雨村が、挿絵の雰囲気を気に入ったのかもしれません。

    これら二つの作品を収録した森下雨村『二重の影』を、文学フリマ大阪11で発行します。雨村の描いた少年少女探偵小説を、これからもヒラヤマ探偵文庫で発売していく予定です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

    あっ、最後にもう一つ。

    この107日から、高知県立文学館で開催される「めざめる探偵たち」という企画展があります。そこのオープニングイベントとして、108日(日)に記念講演会「日本の探偵小説は高知から生まれた――涙香、孤蝶、そして雨村の果たした役割――を私(湯浅篤志)がすることになりました。

    ヒラヤマ探偵文庫から発行されている馬場孤蝶『悪の華』(ヒラヤマ探偵文庫13)、馬場孤蝶訳『林檎の種』(ヒラヤマ探偵文庫28)、森下雨村訳『謎の無線電信』(ヒラヤマ探偵文庫21)、森下雨村『二重の影』(ヒラヤマ探偵文庫30)なども取り上げ、表題内容をお話しするつもりです。もし、よろしかったら、お運びいただけるとたいへんうれしいです。開催日が近くなりましたら、またブログでお知らせをいたします。こちらも、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

  • 文学フリマ大阪に参加します
    ヒラヤマ探偵文庫は、9月10日(日曜日)に、大阪市天満橋駅そばOMMビル2階で開催される文学フリマ大阪11に参加します。

    文学フリマ大阪に参加するのは、昨年に続いて二度目です。

    詳しくはヒラヤマ探偵文庫のwebカタログをご覧下さい。

    8月の夏コミケに続いて二ヶ月連続の出店です。よその活発なサークルさんは、文学フリマもコミケもコミティアも、全部出ているところもあるそうですが、さすがにそんな体力はありません。ところがどうして二ヶ月連続なんている無茶なことをしたのかというと、初申し込みのコミケが当選するかどうか、自信がなかったからです。で、両方とも出ることになってしまったというわけです。コミケはどうせ初申し込みだから落選すると思ったんですがねえ。(もっともその後、駐車場の抽選には落選しましたから、半分予想は当たったということですが)

    両方とも当選して慌てたことは慌てたのですが、せっかくですから両方ともで新刊を出すことにしました。

    まず一冊目は



    「二重の影』森下雨村
    です。
    「新青年」編集長で、探偵小説家の森下雨村が少年少女向けに書いた探偵小説の復刻です。
    佐川春風名義「幻の男」(『日本少年』大正13年1月号)と森下雨村名義「二重の影」(『少女倶楽部』大正12年1月号~4月号)が収録されています。
    編集と解説を担当した湯浅篤志は、江戸川乱歩の「怪人二十面相」に影響を与えた作品ではないかと考察をしています。すでに少年探偵のシリーズキャラクター化が大正時代には行われていたのですね。もちろん日本の探偵小説家たちも、ヒラヤマ探偵文庫でご紹介しているセクストン・ブレイク・シリーズを読んでいたことでしょうから、シリーズ・キャラクターの効用はご存じだったことでしょう。

    二冊目は



    「ある刑事の冒険談」ウォーターズ、平山雄一・訳
    です。
    これは昨年秋の文学フリマ東京で発売した「ある刑事の回想録」(ウォーターズ、平山雄一・訳)の続編です。「ある刑事の回想録」は、「クイーンの定員」第二番に選ばれていました。
    選ばれるほどですから、やはり好評だったのでしょう。さらにもう一冊続編が出ましたので、こちらもご紹介します。やはりエジンバラ警察の刑事を主人公にした、読み切り短編集です。シャーロック・ホームズと全く同じ形式ですね。
    この読み切り短編という形式を発明したのは自分だと、コナン・ドイルは自伝で自慢していましたが、彼がまだ子供の頃に、すでに故郷エジンバラでまったく同じ形式の探偵小説が発表されていたのですから、やはり「本人の言葉」というものもあてにはなりません(笑)。
    リアルタイムでは読んでいなかったかもしれませんが、こうして単行本になっていたのだからその後に読んでいた可能性は十分にありますが、どうやら記憶の彼方に行ってしまったようです。

    また、今年出した新刊も少し持っていきますので、よろしかったらどうぞ。

    昨年の文学フリマ大阪では、「ニューヨーク・ネル」を新刊として出し、ご好評をいただいて、持参した分は完売しました。実際、予想外の売れ行きでした。で、調子にのってまた大阪遠征というわけですが、今年ははたしてどうなるでしょうか。
    文学フリマ京都や、夏コミケのように討ち死にしてしまうでしょうか。
    昨年の1.5倍の広さになった今回の文学フリマ大阪、一艘のお運びを期待しております。
    どうぞ皆様お誘い合わせの上、ご来場ください。
  • 馬場孤蝶訳「林檎の種」の挿絵

    ヒラヤマ探偵文庫の最新刊、『林檎の種』の初出は『週刊朝日』だと言いましたが、そのときの挿絵は古家新が描いていました。このとき古家は、大阪朝日新聞社学芸部に入社したばかりでした。しかし、『週刊朝日』表紙の題字「週刊朝日」の文字デザインを任されていましたので、編集部の期待の大きさが窺えます。新進気鋭の画家だったのですね。

    その彼が、馬場孤蝶訳の「林檎の種」の挿絵を担当していました。ここからも『週刊朝日』編集部の力の入れようがわかるというもんです。

    一つ、挿絵を紹介してみましょう。「林檎の種」第7回(『週刊朝日』大正11年4月23日号、『林檎の種』P41~42)の挿絵です。

    絵の中心に立っている女性は、マアチャンツ銀行の頭取エグルストンの女書記です。エグルストンには、殺害予告が出ていました。その時刻は午後1時45分。挿絵は、予告時刻の2分くらい前の様子を描いています。本文には、以下のようにあります。

    「おおよそ一分ほどの間、女は凝乎と手帖を見ていたが、やがて当惑の様子が額に現れたと見るうちに、突と急な焦然した挙作で起ち上がり、手帖を持って、また頭取室へと入って行った。

     一時四十三分になると、女書記はまた頭取室から出て来て、また前のとおり戸を閉めて、自分の方を人々が見ているのなどは、いっこう何とも思わないような態をして、自分の物書卓のところへ行った。顔は蒼くなっており、一体の様子が何か物怖をして、あたふたしているように見えていた。」

    どうです?

    緊迫した雰囲気の出ている絵柄になっていますね。

    右上の時計と彼女の表情とのバランスがいいです。

    後ろに坐っていたり立っていたりする男達とのコントラストも素晴らしい。

    このような挿絵とともに、初出の「林檎の種」は『週刊朝日』に連載されていたのです。しかし、その『週刊朝日』も、今年2023年6月9日休刊特別増大号で「休刊」することになってしまいました。残念です。